センター試験の化学Ⅰの演習問題を紹介しています。このページは,有機化合物の分離,炭酸水素ナトリウムとの反応,付加反応の解説です。
高校化学Net参考書 ~センター試験演習「化学Ⅰ」~
問題情報
単元 | 有機化合物の分離 炭酸水素ナトリウムとの反応 付加反応 |
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年度 | 2014年度 |
問題番号 | 化学Ⅰ-第4問-問3 |
配点 | a‐2,b‐2 |
計算問題 | × |
難易度 | 難しい |
正解
a ④ 乳酸(CH3CH(OH)COOH)
b ② シクロヘキセン(C6H8)
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解説
a 有機物の密度は,基本的に水よりも小さいので,下層が水,上層が有機化合物となっています。①~⑤の有機化合物のうち,1種類だけが下層の水に溶けています。
有機化合物は水に溶けにくいものが多いのですが,ヒドロキシ基やカルボキシル基などの「親水基」と呼ばれる官能基をもつものは水に溶けやすくなります。
①~⑤のうち,親水基をもつ有機化合物は③のステアリン酸と④の乳酸です。ただし,③のステアリン酸は炭化水素基の部分が大きく,親水基はカルボキシル基1つだけです。これに対して④の乳酸は,炭化水素基の部分が小さく,カルボキシル基だけではなくヒドロキシ基ももっています。
よって,下層の水に含まれている1種類の有機化合物は,乳酸です。
「ステアリン酸は水に溶けにくい」,「乳酸は水に溶ける」という具体的な知識がなくても,最も水に溶けやすい有機化合物を構造から判断することができるのです。
また,炭酸(弱酸)の塩である炭酸水素ナトリウムに,炭酸よりも強い酸であるカルボン酸を加えると,弱酸の遊離がおこって二酸化炭素が発生します。この結果も,カルボキシル基をもつ乳酸であることと矛盾しません。
NaHCO3 + CH3CH(OH)COOH → CH3CH(OH)COONa + H2O + CO2
b 臭素の色がすみやかに消えたのは,付加反応がおこったからです。付加反応がおこりやすいのは,炭素原子間に二重結合や三重結合をもつ化合物です。
②のシクロヘキセンは,語尾が「エン」となっていることからわかるように,シクロアルケンの1種です。環内に二重結合をもっているので,付加反応がおこりやすい有機化合物です。
⑤のベンゼンも二重結合があるような構造式を書きますが,安定な構造をしており,置換反応の方がおこりやすいという性質をもっています。付加反応がおこるためには触媒や紫外線といった条件が必要になります。そのため,この問題の実験結果には当てはまりません。
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