高校化学Net参考書「化学基礎」物質の構成元素 > 混合物と純物質

混合物と純物質

 空気や海水は,2種類以上の純物質が混じり合っている混合物です。例えば,空気のうち78.1%が窒素N2,20.9%が酸素O2,0.93%がアルゴンAr,0.037%が二酸化炭素CO2,0.033%がその他の気体です。また,海水も水H2Oに塩化ナトリウムNaClなどが溶けています。私たちの身のまわりに存在しているのは,ほとんどが混合物です。

 試験に出題されやすい混合物は,空気水溶液(食塩水,塩酸など)石油,土壌,合金(ステンレス,黄銅など)です。特に塩酸(塩化水素HClという気体の水溶液)は出題されやすいので覚えておきましょう。

 混合物を構成している物質の1つ1つが純物質です。純物質では融点・沸点,密度などが一定です。混合物では,その構成物質の割合によって値が異なります。

おまけ話

 金細工師が金に混ぜ物をし,王から預かった金の一部を盗んだという噂がありました。そこで王は,アルキメデスに王冠を壊さずに混ぜ物がしてあるかどうか調べるように命じました。アルキメデスがある日,風呂に入ったところ,水が湯船からあふれるのを見ました。これが,浮力の原理の発見だと言われています。

 浮力は,体積と関係があります。同じ重さの「純金」と「疑惑の王冠」を水に沈めたときの浮力の違いによって,体積が異なることを確認しました。重さは同じなのに体積が違うということは,密度が違うということです。純物質なら密度は一定なので,王冠に混ぜ物がされていたことが証明されました。

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混合物の分離

 純物質の性質を調べるためには,混合物から物質を取り出す必要があります。この操作を分離といいます。また,不純物を取り除く操作を精製といいます。

ろ過

 ろ紙には,目に見えないぐらいの細かい穴が開いています。水に溶けている物質は穴を通り抜けることができますが,溶けていない固体は粒が大きいため通り抜けることができません。このようにして水などに溶ける固体と溶けない固体を分離する操作をろ過といいます。また,ろ紙を通り抜けたあとの溶液をろ液といいます。

 ろ過をするときの注意事項は次の通りです。

  • ろうとに取り付けたろ紙を水で湿らせて,ろうとに密着させる。
  • 試料が飛び散らないように,ガラス棒を伝わらせて入れる
  • 試料は,ろ紙の高さの8分目くらいまで入れる。
  • ろうとの足をビーカーの内壁につけておく。ろ液が跳びはねず,スムーズに流れる。

蒸留

 沸点の差を利用して,先に発生した蒸気を冷却することで目的の物質を液体として得る方法を蒸留といいます。化学基礎では,水溶液から純水を取り出すことがほとんどです。

 液体の混合物から温度区分によって特定の流出物を得る操作を,特に分留(分別蒸留)とよんでいます。「液体空気から窒素N2や酸素O2を取り出す」,または「石油からガソリンや灯油を取り出す」場合などが分留の例としてよく出てきます。

 蒸留に関する問題としては,「実験器具の名称」と「注意事項」が多く出題されます。

  • 実験器具
    • 枝付きフラスコ
    • リービッヒ冷却器
    • アダプター
  • 注意事項
    • 枝付きフラスコの中に入れる溶液の量は,容量の半分以下にする。とびはねた溶液が枝の方に入らないようにするため。
    • 枝付きフラスコの中には,沸騰石を数個入れておく。急な沸騰(突沸)を防ぐため。
    • 温度計の球部は,枝付きフラスコの枝の付け根の高さに合わせる。リービッヒ冷却器へと流れる蒸気の温度を測定するため。
    • リービッヒ冷却器の冷却水は,下部から上部へと流す。冷却水を満たすため。上部から流すと,流しそうめんのように底部だけを水が流れてしまい,蒸気が通る管を確実に冷やすことができない。
    • アダプターの先は密閉しない。得られた液体の分の空気を外に逃がす必要があるため。

抽出

 特定の溶媒に対する溶解度の違いを利用して,目的の物質を溶かし出す操作を抽出といいます。身近な例として,コーヒーやお茶,だし汁などがあります。目的の物質だけを湯に溶かし出して,飲料や料理に利用しているのです。

 抽出に使われるのは,水だけではありません。有機化合物を溶媒として抽出することもあります。例えば,ラー油を作るときなどです。油を用いて,カプサイシン(辛味成分)などを抽出しているのです。

再結晶

 水に溶ける物質はたくさんありますが,温度が変わると溶解度(水100gに溶けることのできる最大量)が変わります。ほとんどの固体は,温度が低くなると溶けにくくなります(再結晶とは関係ありませんが,二酸化炭素CO2などの気体の場合は,温度が低い方が水によく溶けます)。

溶質80℃での溶解度20℃での溶解度
硝酸カリウムKNO316931.6
塩化ナトリウムNaCl40.037.8

 例えば,100gの水に硝酸カリウムKNO3は80℃で169g溶けますが,20℃では31.6gまで溶ける量が減ります。温度を下げることで,かなりの量の硝酸カリウムKNO3が溶けきれなくなることがわかります。溶けきれなくなった硝酸カリウムKNO3は,固体(結晶)として析出します。一方,塩化ナトリウムNaClは80℃で40.0g,20℃で37.8gまで溶けることができます。温度を下げても,塩化ナトリウムNaClの溶ける量はほとんど変わりません

 これらの数値より,硝酸カリウムKNO3と塩化ナトリウムNaClの混合物を少量の湯に溶かした後,温度を下げると硝酸カリウムKNO3だけが結晶として析出することがわかります。

 このようにして,純度の高い結晶を得る方法を再結晶といいます。

クロマトグラフィー

 ノートが雨に濡れてしまったとき,インクがにじんでしまったことはありませんか?そのとき,虹のように何色かの層ができていたはずです。これは,インクの各成分が水で流されるときに,紙への吸着性の違いによって流される速さが違うために起こる現象です。つまり,紙に吸着されやすい成分は移動が遅く,吸着性の弱い成分は速く流されるのです。

 このように,吸着性の違いを利用して各成分を分離する方法をクロマトグラフィーといいます。ろ紙などを用いるクロマトグラフィーを「ペーパークロマトグラフィー」といいます。また,化学的な吸着剤を詰めた管を用いるものを「カラムクロマトグラフィー」といい,環境分析などに利用されています。

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