高校化学Net参考書「化学基礎」化学結合と結晶 > 金属の利用

金属の利用

 金Auや白金Ptを除くほとんどの金属は,酸化物や硫化物として存在しています。私たちは,これらの化合物から化学反応により金属の単体を取り出して利用しています。

 金属は,単体として利用されるだけではありません。金属を加熱して融解し,他の金属を混合してから常温に戻すと合金が得られます。金属の組合せや割合によって様々な性質をもつようになります。

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鉄Fe

 鉄Feは,金属の中で最も多く生産されています。しかし,地殻中の存在量としては,アルミニウムAlに次いで2番目に多い金属です。多くの場合,製鉄の原料となるのは赤鉄鉱Fe2O3です。

 溶鉱炉に赤鉄鉱Fe2O3にコークスCと石灰石CaCO3を加え,高温の空気を送り込むと一酸化炭素COが発生します。一酸化炭素COと反応させて酸素原子Oを取り除く(還元)ことで,鉄Feが得られます。

   Fe2O3 + 3CO → 2Fe + 3CO2

 鉄Feは,強度が高く加工しやすいために日用品や機械,建築材料などに広く用いられています。一方で,鉄Feは湿った空気中でさびやすいという欠点があります。しかし,クロムCrやニッケルNiとの合金にすると,ステンレス鋼というさびにくい素材になります。

アルミニウムAl

 アルミニウムAlは,地殻中に最も多く含まれている金属です。しかし,鉱石からアルミニウムAlを取り出すことが難しかったため,19世紀後半になってようやく大量に生産されるようになりました。アルミニウムの単体は,ボーキサイトを原料として電気分解でつくられます。

 アルミニウムAlは軽い金属なので航空機や新幹線に使われる合金(ジュラルミン)の主成分として利用されています。比較的反応しやすい金属なのですが,空気中で表面が酸化され,その酸化被膜が内部を守っています(不動態)。人工的に不動態としたものはアルマイトとよばれます。

 アルミニウムAlの表面を削って酸化被膜を除き,塩酸HClや水酸化ナトリウムNaOH水溶液に入れると,どちらも水素H2を発生して溶けます。このように,酸性の水溶液にも塩基性(アルカリ性)の水溶液にも溶ける元素を両性元素といいます。

   2Al + 6HCl → 2AlCl3 + 3H2

   2Al + 2NaOH + 6H2O → 2Na[Al(OH)4] + 3H2

 酸化アルミニウムAl2O3はアルミナともよばれ,水に溶けにくく,融点の高い物質です。その結晶は無色透明ですが,不純物としてクロムCrを含むと赤いルビー,チタンTiや鉄Feを含むと青いサファイアになります。

銀Ag

 銀Agは,金属の中で最も電気や熱を導きやすいという特徴があります。反応しにくい金属で,希塩酸や希硫酸に溶けません。しかし,酸化力の強い「希硝酸」,「濃硝酸」,「熱濃硫酸(加熱した濃硫酸)」,「王水(濃塩酸と濃硝酸を3:1で混ぜ合わせたもの)」には溶けます。また,硫化水素と反応して,黒色の硫化銀Ag2Sになります。

 塩素元素Clの確認には,硝酸銀水溶液AgNO3が用いられます。これは,塩化銀AgClが水に溶けにくく,白色沈殿を生じることを利用しています。塩素以外のハロゲン化物イオンも,銀イオンAgと反応して水に溶けにくい物質(淡黄色の臭化銀AgBrや黄色のヨウ化銀AgI)をつくります。ただし,フッ化銀AgFは水に溶けやすいので沈殿を生じません。

水銀Hg

 水銀Hgは,名前の通り常温で液体の金属です。常温で液体の金属は,今のところ水銀Hgだけです。水銀Hgは,温度計や蛍光灯に用いられていますが,毒性の強い物質です。メチル水銀は,水俣病の原因物質とされています。

 また,他の金属と合金をつくりやすく,これらの合金を総称してアマルガムといいます。大仏の金メッキは,アマルガムを利用して施されたと言われています。金とのアマルガムを大仏に塗り,加熱して水銀Hgだけを蒸発させると,金Auが残るのです。

亜鉛Zn・スズSn・鉛Pb

 亜鉛Zn,スズSn,鉛PbはアルミニウムAlと同じく両性元素です(ああすんなり(Al,Zn,Sn,Pb)と覚えます)。

 亜鉛Znは,電池の負極に用いられたり,鋼板Feにメッキすることでトタンとして利用されたりします。亜鉛Znは鉄Feよりも腐食されやすいので,傷がついたときに亜鉛Znが優先的に腐食されることで鉄Feの腐食を防ぐことができます。

 スズSnは,はんだ(導線の接続に用いられる融点の低い合金)の構成金属として用いられたり,鋼板Feにメッキすることでブリキとして利用されたりします。スズSnは鉄Feよりも腐食されにくいので,素材の腐食を防ぐことができます。

 鉛Pbは,鉛蓄電池の電極としてバッテリーに用いられています。毒性が強いため,取り扱いには注意が必要です。

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