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高校化学Net参考書 ~化学基礎~
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分子と分子式
酸素O2や塩化水素HCl,エチレンC2H4などのように,非金属元素だけで構成されている物質のほとんどは分子でできています(塩化アンモニウムNH4Clなどのように,アンモニウムイオンNH4+を含む化合物は,非金属元素だけで構成されていますがイオン結晶です)。
分子は,その分子を構成する原子の種類と数を用いた分子式で表されます。
例えば,酸素分子O2は2つの酸素原子Oが結びついてできています。このように,原子の数は右下に書くようにします。
また,塩化水素HClは1つの水素原子Hと1つの塩素原子Clが結びついてできています。ここから分かるように,原子の数が1のときには省略されます。
イオン結晶のときには,多数のイオンが結合していたので組成式(構成元素の最も簡単な整数比)で表しました。しかし,分子を構成する原子の数は決まっていますので,簡単な整数比になおすということはしません。エチレンC2H4は2つの炭素原子Cと4つの水素原子Hでできています。これを分子式でCH2と表すことは,ないということです。
共有結合
2個の水素原子Hは,それぞれK殻に1個の価電子をもっています。K殻は電子が2個ある状態が安定なので,このままでは不安定な状態です。
2個の水素原子Hがある距離まで近づくと,K殻の一部が重なり合います。このとき,相手の原子核(正電荷)にも引きつけられるようになります。このようにして,それぞれの原子核が2個の電子を引きつけている状態となり,どちらの水素原子もK殻に2個の電子をもつことになります。
このように,2個の原子がそれぞれの価電子を1個ずつ持ち寄り,1対(2個)の電子を共有することによって生じる結合を共有結合といいます。
電子式
電子は,2個で対になったときに安定になることがわかっています。これはK殻の2個だけの話ではなく,L殻以降の8個の電子も4対になっています。
共有結合は,2個の原子が1個ずつの最外殻電子を出し合って共有し,「電子対」をつくることで結びつく結合です。この最外殻電子を点・で表したものを電子式といいます。K殻以外は4対の電子があるときに安定です。よって,元素記号の上下左右の4か所に最外殻電子を配置して表します。このとき,4人にトランプを配るように配置します。
表 最外殻電子数と電子式
最外殻電子の数 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
電子式 | ![]() |
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不対電子の数 | 1 | 2 | 3 | 4 | 3 | 2 | 1 | 0 |


まだ対になっていない電子を不対電子といいます。ちなみに,必ずしも表のような電子式でなければならないというわけではありません。不対電子の数が合っていれば,右図のように上下左右の位置を入れ替えても構わないのです。
不対電子が共有されることによって共有結合が形成されるので,原子は不対電子の数だけ共有結合することができます。例えば,酸素原子8Oの電子配置はK〔2〕L〔6〕なので,最外殻電子は6個です。上の表からわかるように,不対電子は2個あります。よって,次のように2か所の共有結合を形成することができるのです。
2個の原子がそれぞれ2個以上の不対電子を出し合って共有し,2対以上の電子対をつくることもできます。例えば,酸素分子は次のように形成されます。
このように,2個ずつの不対電子を共有して2対(4個)の共有電子対をつくる結合を,二重結合といいます。窒素N2などは,三重結合を形成しています。ちなみに,上記の水分子H2Oなどの共有結合は,一重結合ではなく単結合といいます。
構造式
原子間の1組の共有電子対を1本の線で表した式を,構造式といいます。また,このときの共有電子対を表す線を,価標といいます。単結合は1本の線で,二重結合と三重結合は,それぞれ2本,3本の線で表します。
例:水H2O ・・・ H-O-H (電子式と同様に,上下左右を入れ替えても構いません)
酸素O2 ・・・ O=O
窒素N2 ・・・ N≡N
構造式において,1つの原子から出ている価標の数は原子の種類ごとに決まっています。その数を原子価といい,上記の不対電子の数と一致します。
族 | 1 | 14 | 15 | 16 | 17 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
原子 | H | C | N | O | S | F | Cl | Br | I |
原子価 | 1 | 4 | 3 | 2 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 |
不対電子の数 | 1 | 4 | 3 | 2 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 |
原子価を利用すると,分子の構造式を考えるときに便利です。よく目にする分子の構造式を書けるように練習しておきましょう。
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配位結合
共有結合では,2つの原子がそれぞれの不対電子を共有することで共有電子対をつくりました。1+1=2の関係です。
しかし,共有電子対をつくる方法は,他にもあります。ある原子が非共有電子対をもっている場合,これを他の原子と共有することでも共有電子対をつくることができます。2+0=2の関係です。このようにして共有電子対をつくる結合を,配位結合といいます。例えば,非共有電子対をもつ水分子H2Oに,電子をもたない水素イオンH+が配位結合して,オキソニウムイオンH3O+が生じます。
このように水素イオンH+は,実際には水分子H2Oと配位結合してできたオキソニウムイオンH3O+として存在しているのです。ただ,ほとんどの場合はこの反応を省略して,水素イオンH+で考えます。
オキソニウムイオンH3O+の生成の他,アンモニアNH3と水素イオンH+からアンモニウムイオンNH4+が生じる反応も,配位結合の例としてよく出てきます。
配位結合は,もとから存在していた他の共有結合と全く同じ状態になります。あくまで,結合ができるときの違いだけで結合の種類を決めています。
錯イオン
水分子H2Oやアンモニア分子NH3は,非共有電子対をもっているので配位結合することができます。相手が水素イオンH+以外でも配位結合は可能で,一部の金属イオンとも配位結合をつくることができます。
銅(Ⅱ)イオンは,水溶液中で水分子と配位結合して[Cu(H2O)4]2+という複雑なイオンになっています。この水溶液に多量のアンモニア水を加えると,[Cu(NH3)4]2+というイオンになります。このように,金属イオンに別の分子やイオンが配位結合してできたイオンを錯イオンといいます。
ちなみに,[Cu(H2O)4]2+は配位結合した水分子を省略して,Cu2+を用います。オキソニウムイオンH3O+を水素イオンH+で考えるのと同じです。
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