高校化学Net参考書「化学基礎」酸と塩基の反応 > 酸・塩基の分類

酸・塩基の価数

 塩化水素HClや硫酸H2SO4を水に溶かすと,次のように電離して水素イオンHを生じます。
   HCl → H + Cl
   H2SO4 → 2H + SO42-

 このとき,化学反応式と量的関係を考えると,1molの塩化水素HClが電離すると1molの水素イオンHが生じます。また,1molの硫酸H2SO4が電離すると2molの水素イオンHが生じます。

 塩化水素HClのように1molの酸から1molの水素イオンHを生じるものを1価の酸といいます。また,硫酸H2SO4のように1molの酸から2molの水素イオンHを生じるものを2価の酸といいます。

 気を付けたいのが,酸に含まれる水素原子がすべて水素イオンHになるとは限らないということです。例えば,酢酸CH3COOHは次のように電離します。
   CH3COOH → CH3COO + H

 1molの酸から1molの水素イオンHしか生じませんので,酢酸CH3COOHは1価の酸です。水素原子が4つあるから「4価の酸」とするのは誤りです。

 塩基の価数についても同様に考えることができます。水酸化ナトリウムNaOHや水酸化カルシウムCa(OH)2は次のように電離します。
   NaOH → Na + OH
   Ca(OH)2 → Ca2+ + 2OH

 1molの塩基から生じる水酸化物イオンOHの物質量〔mol〕が塩基の価数となるので,水酸化ナトリウムNaOHは1価の塩基,水酸化カルシウムCa(OH)2は2価の塩基です。

 アンモニアNH3は,分子内に水酸化物イオンOHを含んでいません。しかし,アレニウスの定義で考えると,水に溶かしたとき,次のように水H2Oと反応して水酸化物イオンOHを生じます。
   NH3 + H2O  NH4 + OH

 よって,アンモニアNH3は1価の塩基です。

 また,ブレンステッドの定義で考えても,1molのアンモニアNH3は1molのHを受け取るので,1価の塩基と考えることができます。
   NH3 + H → NH4

表 主な酸・塩基の価数

物質名化学式分類
フッ化水素HF1価の酸
塩化水素HCl
臭化水素HBr
ヨウ化水素HI
硝酸HNO3
酢酸CH3COOH
硫酸H2SO42価の酸
シュウ酸(COOH)2
二酸化炭素CO2
硫化水素H2S
リン酸H3PO43価の酸
水酸化ナトリウムNaOH1価の塩基
水酸化カリウムKOH
アンモニアNH3
水酸化カルシウムCa(OH)22価の塩基
水酸化バリウムBa(OH)2
水酸化マグネシウムMg(OH)2
水酸化鉄(Ⅱ)Fe(OH)2
水酸化銅(Ⅱ)Cu(OH)2
水酸化アルミニウムAl(OH)33価の塩基
水酸化鉄(Ⅲ)Fe(OH)3

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電離度

 塩化水素HClと酢酸CH3COOHは,どちらも1価の酸です。しかし,同じモル濃度の塩酸と酢酸では,酸としての反応の程度が違います。例えば,同じモル濃度の塩酸と酢酸に亜鉛を入れると,塩酸の方が激しく水素を発生しながら溶けていきます。

 これは,酸性を示す原因である「水素イオンH」のモル濃度が違うために生まれる差です。つまり,酢酸の方はあまり電離しておらず,水素イオンHが少ないということがわかります。

 そこで,どの程度の割合で電離しているのかを表したものが電離度です。電離度を表す記号としてはα(アルファ)が用いられ,「まったく電離していない場合の物質量〔mol〕」に対する「電離した物質量〔mol〕」の割合を計算して求めます。

   電離度を求める公式

 たとえば,1molのアンモニアを水に溶かしたときに,OHが0.01mol生じたとします。このときの量的関係は,次のようになります。

NH3H2ONH4OH
電離前〔mol〕1たくさん0ほぼ0
変化量〔mol〕-0.01-0.01+0.01+0.01
電離後〔mol〕0.99たくさん0.010.01
 このとき,まったく電離していない場合のアンモニアの物質量は1molです。また,電離した物質量は,0.01molです。  よって,このアンモニア水におけるアンモニアの電離度は,0.01mol/1mol=0.01 です。  ちなみに,電離度は温度や濃度によって変化します。一般的に,濃度が高くなると電離しにくくなり,電離度は小さな値になります。逆に,希薄溶液では電離度が高くなります

酸・塩基の強弱

 同じ温度や濃度の水溶液でも,溶質の種類が違うと電離度も異なる値になります。

 塩化水素や水酸化ナトリウムなどは,濃度が高くても非常に大きな電離を示します。一方,酢酸やアンモニアなどは,電離度は小さい傾向があります。

 塩化水素のように,水溶液中でほぼすべて電離する酸を,強酸といいます。同様に,水溶液中でほぼすべて電離する塩基を,強塩基といいます。

 一方,酢酸のように,水溶液中であまり電離しない酸や塩基を,弱酸弱塩基といいます。

 高校における化学基礎・化学で出てくる酸・塩基では,強酸・強塩基の方が圧倒的に少ないので,強酸・強塩基を暗記してしまい,それ以外は弱酸・弱塩基と判断することができます。

強酸塩化水素HCl,臭化水素HBr,ヨウ化水素HI,硝酸HNO3,硫酸H2SO4
(ハロゲン化水素のうち,フッ化水素HFだけは弱酸)
強塩基アルカリ金属元素の水酸化物,アルカリ土類金属元素の水酸化物
*よく出てくる強塩基は,次の4つ。
水酸化ナトリウムNaOH,水酸化カリウムKOH,
水酸化カルシウムCa(OH)2,水酸化バリウムBa(OH)2

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