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中和反応
酸と塩基が,互いに性質を打ち消し合う反応を中和反応(または単に中和)といいます。
例えば,酸性の塩酸に水酸化ナトリウム水溶液加えると,その酸性は弱くなっていきます。さらに加え続けると,水溶液は中性となって完全に酸の性質は失われます。このとき,次の反応が起こっています。
HCl + NaOH → NaCl + H2O
また,塩酸や水酸化ナトリウム水溶液では,溶質の塩化水素HClや水酸化ナトリウムNaOHは電離してイオンを生じています。この中和反応をイオン反応式で表すと,次のようになります。
H+ + Cl- + Na+ + OH- → H2O + Cl- + Na+
⇒ H+ + OH- → H2O
つまり,中和反応は,H+とOH-が反応してH2Oを生じる反応といえます。それ以外のイオン(ここではCl-やNa+)は変化していません。
酸性を示す原因であるH+は,塩基のOH-によって減少しています。もちろん,塩基性を示す原因であるOH-も,酸のH+によって減少しています。このようにして,酸と塩基が互いの性質を打ち消し合っているのです。
ただし,塩化水素(酸)とアンモニア(塩基)の反応のように,水を生じない中和反応もあります。
HCl + NH3 → NH4Cl
中和反応では,水の他に塩(えん)を生じます。塩は,上記のCl-やNa+のように,酸や塩基から生じたイオンが結合してできるNaClのようなイオン結晶です。
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量的関係
中和反応において,H+とOH-は物質量比1:1で反応します。よって,酸から生じるH+の物質量〔mol〕と塩基から生じるOH-の物質量〔mol〕が等しいとき,酸と塩基は過不足なく反応します。
酸から生じるH+〔mol〕=塩基から生じるOH-〔mol〕 ・・・①
ここで,酸から生じるH+〔mol〕は,酸の価数と物質量の積で表すことができます。例えば,0.30molの硫酸H2SO4(2価の酸)から生じるH+は2×0.30=0.60molです。
これは,塩基から生じるOH-〔mol〕についても同様に考えることができるので,①式は次のように表すことができます。
酸の価数×酸の物質量〔mol〕=塩基の価数×塩基の物質量〔mol〕 ・・・②
酸や塩基の物質量〔mol〕は,次のように,問題によって様々な求め方があります。
- 水溶液のモル濃度〔mol/L〕と体積〔mL〕が与えられている場合
物質量〔mol〕=モル濃度〔mol/L〕×体積〔L〕 - 質量〔g〕と分子量・式量(⇒モル質量〔g/mol〕)が与えられている場合
- 標準状態における気体の体積〔L〕が与えられている場合
この中で,最も多く出題されるのが,水溶液のモル濃度〔mol/L〕と体積〔mL〕が与えられている場合です。これを②式に当てはめると,次のように表すことができます。
酸の価数×酸のモル濃度〔mol/L〕×体積〔L〕
=塩基の価数×塩基のモル濃度〔mol/L〕×体積〔L〕 ・・・③
ほとんどの場合,水溶液の体積は〔mL〕の単位で与えられます。1000で割って〔L〕の単位に変換することを忘れないでください。酸・塩基がともに水溶液のモル濃度と体積が与えられているなら大丈夫なのですが,質量〔g〕や気体の体積〔L〕が組み合わせられると計算が合わなくなってしまいます。
また,少し発展させて,酸(塩基)が2種類以上用いられる問題も出題されることがあります。例えば,硫酸にアンモニアを反応させた後,水酸化ナトリウムで中和するという問題です。
結局はH+とOH-の物質量の関係です。OH-を生じる塩基が2種類あっても,アンモニアと水酸化ナトリウムそれぞれから生じるOH-の物質量の総和が硫酸から生じるH+の物質量と等しくなるという式を立てればいいのです。
弱酸や弱塩基の中和反応における量的関係
中和反応における量的関係では,酸・塩基の価数を考慮する必要がありました。では,酸・塩基の強弱を考える必要はあるのでしょうか。
弱酸・弱塩基は一部しか電離しておらず,H+やOH-が少ししか生じないように思えます。しかし,中和反応の量的関係において,酸・塩基の強弱を考慮する必要はありません。
確かに,弱酸では一部しか電離していません。ただ,中和反応が起こってH+の物質量が減少すると,酸の電離が進んで新たにH+が生じます。これが繰り返されることで,すべての酸が電離してH+を生じることになります。
弱塩基も同様に,中和反応が起こってOH-の物質量が減少すると,塩基の電離が進んで新たにOH-が生じます。これが繰り返されることで,すべての塩基が電離してOH-を生じることになります。
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