高校化学Net参考書「化学基礎」酸化還元反応 > 電池の原理

電流と電子の流れ

 電池には,正極と負極があります。正極から外部を通って負極へと電流が流れています。

 しかし,この定義は正電荷の流れという認識でつくられたものです。実際は,導線内を負電荷の電子eが負極から外部を通って正極へと流れています

電池と電子e<sup>-</sup>の流れ

 酸化還元反応は,電子eの受け渡しの反応ですので,電子の動きに注目することになります。

 電池を学習するにあたって,負極から電子eが流れ出て,正極に電子eが戻ってくるというイメージをつくっておきましょう。

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電池の原理とボルタ電池

 希硫酸に亜鉛板と銅板を浸したものをボルタ電池といいます。亜鉛板が負極,銅板が正極となり,1.1V程度の起電力をもっています。

ボルタ電池の構成

 このように,2種類の金属を電解質水溶液に浸すことで,電池をつくることができます

 金属にはイオン化傾向があり,電子eを放出して陽イオンになる能力があります。2種類の金属のうち,イオン化傾向の大きい金属が電子eを放出することができるのです。

電極のイオン化傾向と電子e<sup>-</sup>の流れ

 このことから,電池を構成する2種類の金属のうち,イオン化傾向の大きい方が負極になることがわかります。

 一方,電子を放出することができなかった金属の方には,電子eが流れてくることになります。金属が電子eを受け取って陰イオンになることは通常ありませんので,水溶液中のイオンや分子のうち,電子eを受け取りやすいものが反応することになります。ボルタ電池では,水素イオンHが電子eを受け取って水素H2が発生します。

ボルタ電池と電子e<sup>-</sup>の流れ

電池の起電力

 電池を構成する2種類の金属のうち,イオン化傾向の大きい金属が電子eを放出して陽イオンになるので,負極となります。そのため,負極となる金属のイオン化傾向が大きいほど,その電池の起電力は大きくなります

 一方,正極となる金属も起電力に影響しています。

 電池を構成する2種類の金属は,どちらも電子eを放出して陽イオンになろうとしています。イオン化傾向の大きい方の金属だけが電子eを放出することができますが,他方の正極も電子eを放出しようとして対抗しているのです。

 よって,正極となる金属のイオン化傾向が小さいほど,負極からの電子eの放出が妨げられず,起電力が大きくなるのです。

イオン化傾向と起電力

 たとえば,亜鉛が電子eを放出する能力を2.28,銅が電子eを放出する能力を1.18とします。すると,亜鉛が電子eを放出する能力2.28のうち,1.18が銅によって相殺されて,残りの1.10を起電力として発揮することができたということになるのです。

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