問題情報

単元エステルの加水分解
年度2010年度
問題番号化学Ⅰ-第4問-問2
配点a‐3,b‐3
計算問題×
難易度難しい

正解

② Aはシス形の異性体である。

③ 3

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解説

 エステルは,カルボン酸とアルコールの脱水縮合(エステル化)により生じる物質です。これを酸で加水分解すると,カルボン酸RCOOHとアルコールR’OHが生じます。

   エステルの加水分解

この問題では,化合物Aと化合物Bが1mol:2molで生じていることから,化合物Aはカルボキシル基-COOHまたはヒドロキシ基-OHのどちらかを2つもっており,2か所で化合物Bとエステル結合していると考えられます。

幾何異性体 Aには幾何異性体が存在するので,二重結合をもち,R1≠R2とR3≠R4の両方を満たす構造をしています。また,脱水反応が起こって分子式C4H2O3で表される化合物Cが得られると書かれています。分子内脱水(脱離)と分子間脱水(縮合)の両方が考えられますが,分子内脱水なら元の化合物AはC4H2O3+H2O=C4H4O4の分子式,分子間脱水なら元の化合物Aは(C4H2O3+H2O)÷2=C2H2O2の分子式をもちます。ただ,化合物AがC2H2O2の分子式だと,上記の官能基を2つもちながら幾何異性体が存在するという構造がありません。よって,化合物Aの分子式はC4H4O4です。

 C4H4O4で幾何異性体をもつのはフマル酸とマレイン酸です。どちらもカルボキシル基を2つもつジカルボン酸(2価カルボン酸)で,フマル酸がトランス形,マレイン酸がシス形です(虎に踏まれて稀に死す)。このうち,脱水反応が起こるのは,2つのカルボキシル基が近いマレイン酸(シス形)です。

フマル酸の構造式マレイン酸の構造式
フマル酸マレイン酸

ヨードホルム反応を示す構造 Bはヨードホルム反応を示すと書かれています。ヨードホルム反応を示すのは,右図の構造をもつ物質です。Rには水素原子Hまたは炭化水素基が当てはまります。また,Bを酸化するとアセトンになるので,化合物Bは2‐プロパノールCH3CH(OH)CH3です。

 話は戻りますが,化合物Bの分子式C3H7Oを決定してから,元のエステルの分子式C10H16O4と合わせることでも,化合物Aの分子式を求めることが出来ます。2つの化合物Bと1つの化合物Aで2か所のエステル化が起こってC10H16O4が得られるので,次の式が成り立ちます。
   C3H7O×2 + CxHyOz - H2O×2 = C10H16O4
   CxHyOz = C4H4O4

a ① 先述のように,Aは2価カルボン酸です。

② Aは,分子内脱水(脱離)が起こっていることから,2つのカルボキシル基が近いシス形です。

③ マレイン酸に水素を付加されると,次のような物質になります。不斉炭素原子は,「結合する原子または原子団がすべて異なる炭素原子」です。これに該当する炭素原子はありませんので,不斉炭素原子は存在しません。

   マレイン酸への水素付加

無水マレイン酸の構造式④ マレイン酸の脱水により生じる無水マレイン酸は,右図のような構造をしています。炭素原子4個と酸素原子1個の計5個の原子からなる環が存在します。

⑤ 無水マレイン酸は,マレイン酸の2つのカルボキシル基から脱水して生じた酸無水物です。カルボキシル基として残っている部分がありませんので,カルボキシル基は存在しません。

b 化合物Bは,2‐プロパノールCH3CH(OH)CH3です。あとで示すように,単結合のみでできている化合物です。二重結合や環構造があると,水素原子の数が減ってしまうので,構造異性体も単結合のみでできています。

 構造異性体は,まず炭素原子のつながりを考えます。炭素数が3なので,炭素原子の枝分かれは存在しません。

 次に,アルコールとエーテルに分けて考えます。アルコールの構造異性体は,ヒドロキシ基の位置を変えながら確認していきます。1‐プロパノールと3‐プロパノールはひっくり返すと同じ構造になることから,同一物質です。よって,次の2種類の構造異性体が存在します。

1‐プロパノールの構造式2‐プロパノールの構造式
1‐プロパノール2‐プロパノール

 エーテルの構造異性体は,炭素原子の間に酸素原子を割り込ませて確認します。炭素原子間の単結合は2か所ありますが,どちらに酸素原子を割り込ませても,ひっくり返せば同じ構造になるので同一物質です。よって,次の1種類の構造異性体が存在します。

エチルメチルエーテルの構造式
エチルメチルエーテル

 よって,アルコールとエーテルを合わせて3種類の構造異性体が存在します。

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問題エステルの加水分解の問題
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