センター試験の化学Ⅰの演習問題を紹介しています。このページは,塩素の実験室的製法の解説です。
高校化学Net参考書 ~センター試験演習「化学Ⅰ」~
問題情報
単元 | 塩素の実験室的製法 |
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年度 | 2013年度 |
問題番号 | 化学Ⅰ-第3問-問7 |
配点 | a-2,b-2 |
計算問題 | × |
難易度 | 易しい |
正解
a ① 濃塩酸 酸化マンガン(Ⅳ)
b ② 下方置換が最もよい。
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解説
a 塩素の実験室的製法の化学反応です。原料としては濃塩酸HClと酸化マンガン(Ⅳ)MnO2が用いられます。酸化マンガン(Ⅳ)は,酸素O2の発生(過酸化水素H2O2や塩素酸カリウムKClO3の分解)では触媒として用いられますが,塩素Cl2の発生では酸化剤として用いたられます。
酸化剤 : MnO2 + 4H+ + 2e- → Mn2+ +2H2O
還元剤 : 2HCl → Cl2 + 2H+ + 2e-
↓両辺をそれぞれ足し合わせて,e-を消去
イオン反応式 : MnO2 + 2H+ + 2HCl → Mn2+ + 2H2O + Cl2
↓左辺で省略されているイオン(2Cl-)を両辺に加えて整理
化学反応式 : MnO2 + 4HCl → MnCl2 + 2H2O + Cl2
② 弱塩基の遊離により,アンモニアNH3が発生します。
③ 硫酸は不揮発性です。陽イオンと陰イオンのすべての組合せを考えたときに,1つだけ気体として揮発しやすい塩化水素HClが発生します。
④ 水素よりもイオン化傾向の大きい金属は,希塩酸や希硫酸に溶けて水素H2を発生します。
b この実験では発生した混合気体を濃硫酸に通じることで,不純物としての水蒸気を除いています。そのあとに水上置換で塩素を捕集すると,水を通る間に水蒸気を含んでしまいます。よって,水上置換は不適切です。
上方置換か下方置換かは,空気よりも密度が大きいか小さいかで判断します。また,気体の密度の比較は,分子量の比較で考えられます。すべての気体は標準状態で1molあたり22.4Lなので,分子量(1molあたりの質量(g)と同じ値)を22.4Lで割ると気体の密度(g/L)を求めることができます。22.4で割る前後で大小関係は逆転しませんから,分子量が大きい気体ほど密度が大きいということです。
空気の組成を80%が窒素N2(分子量28),20%が酸素O2(分子量32)だとすると,空気の見かけの分子量は,次のように求めることができます。
28×0.8 + 32×0.2 = 28.8
また,塩素Cl2の分子量は 35.5×2=71 なので,空気よりも重い気体だということが分かります。よって,下方置換で捕集するのが適当です。
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