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化学とその役割

 私たちは,金属やプラスチックを素材として利用しています。しかし,素材としてだけではなく,さまざまな用途で化学物質を利用しているのです。例えば,セッケンや合成洗剤,食品添加物などです。

 これらは,適切な使用量を守ることで高い効果を発揮します。少なすぎれば効果が期待できません。多すぎると健康や環境に悪影響を及ぼす場合があります。

洗剤

セッケン分子

 洗剤には,セッケンと合成洗剤があります。どちらも右図のように,分子中に「水になじみやすい(親水性の)部分」と「水になじみにくい(疎水性の)部分」があります。

 水洗いで落ちない衣類の汚れは,油脂です。油なので,水に溶けないのです。しかし,セッケン分子には疎水性部分があります。疎水性部分は水になじみにくいのですが,逆に油とはなじみやすい性質があります。

 油汚れに,セッケン分子の疎水性分子がなじんでいるところを想像してみてください。表面が,セッケン分子の親水性部分で覆われているはずです。イメージは球状のスポンジに待ち針が刺さっている状態です。スポンジの表面が待ち針の頭の赤色にすっかり変わります。

 表面が親水性の部分で覆われていると,油分が水中に分散(乳化)していきます。このようにして,衣類の油汚れを落とすことができるのです。

 油分にセッケン分子がくっつくことで汚れを落とすので,濃度が薄いと洗浄効果は弱くなります。しかし,油分にくっつくことができるセッケン分子の数は限られているので,濃度が高すぎても洗浄効果は上がりません。むしろ,下水処理の負担が大きくなってしまいます。

セッケンと合成洗剤の比較

 セッケンは,主に植物からとれる油脂を水酸化ナトリウムNaOHで分解してつくられます。合成洗剤は,石油などを原料としてつくられています。

 セッケンには,いくつかの短所があります。例えば,カルシウムイオンCa2+やマグネシウムイオンMg2+を多く含む水(硬水)では,沈殿を生じて洗浄力が低下してしまいます。合成洗剤は,硬水でも沈殿を生じません。また,セッケンの水溶液は塩基性を示します。そのため,絹などのタンパク質でできた繊維を痛めてしまいます。

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食品添加物

 食品の安全性を高めるために,酸化防止剤や保存料が添加されています。例えば,清涼飲料水の原材料名を確認してみると,必ずと言っていいほど「ビタミンC」が入っています。これは,栄養としてではなく,酸化防止剤として添加されているものです。ビタミンC(アスコルビン酸)は酸化されやすい物質なので,清涼飲料水の代わりに酸化されることで守ってくれているのです。

 代表的な保存料としては,ソルビン酸カリウムなどがあります。いずれも安全性が確認されたものですが,過剰に摂取すると健康を害する場合があります。そのため,食品添加物の使用量は法律で定められています。

おまけ話

 ソルビン酸カリウムは,CH3-CH=CH-CH=CH-COOK で表される物質です。カビや酵母,細菌の生育を妨げる性質をもっています。食品とともに人間の体内に入ると,クロトン酸CH3-CH=CH-COOHと酢酸CH3-COOHに分解され,最終的には二酸化炭素CO2と水H2Oになります。

 安全な保存料として,ソーセージなどに広く利用されています。

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