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酸化還元反応の量的関係

 酸化還元反応は,電子の受け渡しを中心とした反応です。量的関係を考えるときには,「還元剤が相手に与える電子の数」と「酸化剤が受け取る電子の数」が等しいことを利用します。

 前のページで,酸化剤や還元剤の半反応式のつくり方を紹介しました。たとえば,過酸化水素と過マンガン酸カリウム(硫酸酸性)の酸化還元反応についての半反応式はそれぞれ次のとおりです。

   (還元剤)H2O2 → O2 + 2H + 2e
   (酸化剤)MnO4 + 5e + 8H → Mn2+ + 4H2O

 ここで,過酸化水素の物質量をn〔mol〕とおくと,過酸化水素が相手に与える電子eの物質量は係数比からn×2〔mol〕となります。

 同様に,過マンガン酸カリウムの物質量をn´〔mol〕とおくと,過マンガン酸カリウムが受け取る電子eの物質量は係数比からn´×5〔mol〕となります。

 よって,過マンガン酸カリウムと過酸化水素が過不足なく反応したとき,n×2〔mol〕=n´×5〔mol〕が成り立ち,どちらかの物質量がわかっていれば他方の物質量を求めることができます。

 半反応式において,酸化剤や還元剤の係数を1とおいたときの電子eの係数を「価数」と考えると,次の公式が成り立ちます。

   還元剤の物質量〔mol〕×還元剤の価数 = 酸化剤の物質量〔mol〕×酸化剤の価数

 この公式は,中和の公式と同じような考え方をしています。

 多くの場合,酸化剤や還元剤の物質量〔mol〕を求める方法はモル濃度〔mol/L〕×水溶液の体積〔L〕ですが,質量〔g〕とその分子量・式量から求める場合もあります。

 また,イオン反応式や化学反応式を完成させ,その係数比から計算する方法もあります。

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酸化還元滴定

 中和滴定と同様の考え方で,酸化還元反応についても滴定をすることができます。酸化剤または還元剤の標準溶液を用いて,過不足なく反応する還元剤または酸化剤の濃度を求めるのです。

 多くの場合,酸化剤として硫酸酸性の過マンガン酸カリウムKMnO4が用いられます。還元剤として働く過酸化水素や有機物の濃度を調べることができます。

 このとき,中和滴定のように指示薬を加える必要がありません。KMnO4水溶液は濃い赤紫色をしているのですが,還元剤と反応するとほぼ無色になります。還元剤がすべて反応すると,未反応のKMnO4によって淡赤色になります

 また,過マンガン酸カリウムを酸化剤として用いるときには,硫酸を用いて酸性にします。

 まず,中性・塩基性だと,反応後に酸化マンガン(Ⅳ)MnO2を生じます。中学生までは二酸化マンガンとよんでいた物質です。過酸化水素との反応では触媒として働いてしまい,時間とともにH2O2が分解してしまいます。これでは過マンガン酸カリウムと反応していない分の還元剤があるので,量的関係が崩れてしまい濃度を求めることができません。

 また,酸性にするために硫酸を加えていますが,他の代表的な酸では不都合です。

 たとえば,硝酸で酸性にすると,濃硝酸でも希硝酸でも酸化剤として働いてしまいます。過マンガン酸カリウムで滴定しているのにもかかわらず,還元剤の一部はHNO3と反応していることになります。これでは過マンガン酸カリウムと反応していない分の還元剤があるので,量的関係が崩れてしまい濃度を求めることができません。

 塩酸で酸性にすることもできません。塩化物イオンが還元剤としてはたらき,塩素を生じるからです。KMnO4は,試料としての還元剤だけでなく塩化物イオンと反応することになります。これでは過剰の過マンガン酸カリウムが反応してしまうので,量的関係が崩れてしまい濃度を求めることができません。

 希硫酸なら,強酸として働くだけで,酸化剤・還元剤としては働きません。濃硫酸で,しかも加熱した場合に熱濃硫酸とよばれて酸化作用を示しますが,酸化還元滴定に用いるときには加熱しませんし,濃度も低いので使用することができるのです。

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酸化剤と還元剤 ページトップ 酸化剤・還元剤の強さ