高校化学Net参考書「化学基礎」酸化還元反応 > 酸化・還元の定義

酸素原子の授受による酸化・還元の定義

 中学生のときに,「酸素と化合するから酸化」というように教わっているかと思います。この定義が最も単純でわかりやすいと思います。

 たとえば,黒色の酸化銅(Ⅱ)CuOを加熱して水素H2の中に入れると,きれいな赤銅色になります。
   CuO + H2 → Cu + H2O
   酸化銅(Ⅱ)と水素の酸化還元反応

 この反応において,水素が酸素原子を受け取っているので,「水素が酸化された」ということになります。

 一方,酸化銅(Ⅱ)は,酸素原子を失っています。このとき,「酸化銅(Ⅱ)が還元された」ということになります。

 このように,酸化と還元は同時に起こるため,全体としては「酸化還元反応」とよばれます。

スポンサーリンク

水素原子の授受による酸化・還元の定義

 水素原子の受け渡しによっても,酸化・還元を定義することができます。

 水素原子は陽イオンになりやすく,酸素原子は陰イオンになりやすい等,水素原子は酸素原子の逆の性質をもっていると考えられます。そのため,酸化と還元の関係も酸素とは逆になります

 酸素原子を受け取ると酸化されたことになるので,水素原子を受け取ると還元されたことになります。また,酸素原子を失うと還元されたことになるので,水素原子を失うと酸化されたことになります。

 たとえば,硫化水素H2Sと酸素O2を混合したものに点火すると,容器の内壁に硫黄Sの細かい粒が付着します。
   2H2S + O2 → 2S + 2H2O
   硫化水素と酸素の酸化還元反応

 この反応において,酸素が水素原子を受け取っているので,「酸素が還元された」ということになります。

 一方,硫化水素は,水素原子を失っています。このとき,「硫化水素が酸化された」ということになります。

 もちろん,これは酸素原子の授受による定義と矛盾しません。硫化水素は酸素と反応しているので,確かに酸化されています。

電子の授受による酸化・還元の定義

 マグネシウムMgなどの金属は,燃焼すると酸化物を生じます。
   2Mg + O2 → 2MgO

 この反応で生じた酸化マグネシウムMgOは,金属元素と非金属元素からなる化合物なのでイオン結晶です。これは,陽イオンと陰イオンで構成されているということです。

 マグネシウムは電子eを失ってマグネシウムイオンになっています。
   Mg → Mg2+ + 2e
   マグネシウムイオンの生成

 また,酸素は電子を受け取って酸化物イオンになっています。
   O2 + 4e → 2O2-
   (原子1個あたりでは O + 2e → O2-
   酸化物イオンの生成

 ここで,マグネシウムは酸化されていることから,電子を失うと酸化されたことになります。また,電子を受け取った酸素は還元されたことになります。

 電子の授受による定義を用いると,酸素原子や水素原子がかかわらない反応についても酸化・還元を判断することができます

 たとえば,赤熱した同線を塩素Cl2の中に入れると,塩化銅(Ⅱ)CuCl2の褐色の煙を生じます。
   Cu + Cl2 → CuCl2

 CuCl2は金属元素と非金属元素からなる化合物なのでイオン結晶です。よって,陽イオンと陰イオンで構成されています。
   Cu → Cu2+ + 2e
   Cl2 + 2e → 2Cl
   (原子1個あたりでは Cl + e → Cl

 銅は電子を失っているので,酸化されたことになります。一方,塩素は電子を受け取っているので,還元されたことになります。

 これまでの酸化還元の定義をまとめると,次の表のようになります。

酸素原子を水素原子を電子を
酸化された受け取った失った失った
還元された失った受け取った受け取った

スポンサーリンク

酸化還元反応 ページトップ 酸化数