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高校化学Net参考書 ~化学基礎~
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分子結晶
非金属元素だけで構成されている物質は,例外(塩化アンモニウムNH4Clなど)を除いて小さな分子をつくっています。その分子が規則正しく並んでいる固体を分子結晶といいます。
分子どうしは,分子間力という小さな力で引き合っています。そのため,低い温度でもバラバラになりやすく,融点や沸点が低いという特徴があります。また,軟らかくて砕けやすいものが多いともいえます。
分子どうしの結びつきが弱いため,容易に気体になるということで,固体から気体へと状態変化(昇華)する物質があります。ドライアイスCO2,ヨウ素I2,ナフタレンC10H8,パラジクロロベンゼンC6H4Cl2などが代表例です。昇華は,他の種類の結晶ではほとんど見られない現象です。
分子からなる物質(無機物質)
純物質は,有機化合物と無機物質に分けることもできます。有機化合物は,炭素原子を含む化合物です。ただし,一酸化炭素CO,二酸化炭素CO2,炭酸塩(炭酸ナトリウムNa2CO3など),シアン化合物(シアン化カリウムKCNなど)などは,例外的に有機化合物ではなく無機物質に分類されています。有機化合物以外の純物質が,無機物質です。
水素H2
水素H2は,空気中にはほとんど存在しない無色・無臭の気体です。希塩酸HClや希硫酸H2SO4の水溶液に亜鉛Znなどの金属を加える実験や,水H2Oの電気分解などで得ることができます。
Zn + H2SO4 → ZnSO4 + H2
2H2O → 2H2 + O2
反応性が高く,酸素と混合して着火すると,爆発的に反応して水H2Oを生じます。このときに大きなエネルギーが発生するので,燃料として用いられています。
2H2 + O2 → 2H2O
酸素O2
酸素O2は,乾燥空気中に約21%含まれている無色・無臭の気体で,言うまでもなく多くの動植物の呼吸に必要な物質です。また,助燃性があります。
工業的には液体空気の分留で得られます。また,水H2Oの電気分解で水素H2とともに得ることができ,過酸化水素H2O2に触媒(酸化マンガン(Ⅳ)MnO2,小中学校では二酸化マンガンとして習う)を加えることでも得られます。
2H2O2 → O2 + H2O
窒素N2
窒素N2は,乾燥空気中に約78%含まれている無色・無臭の気体です。通常の条件ではほとんど化学反応しないので,食品や飲料の容器内に詰めておくことで酸化することを防止することができます。
工業的には液体空気の分留で得られます。実験室では,亜硝酸アンモニウムNaNO2の水溶液を加熱することで得ることができます。
NaNO2 → N2 + 2H2O
窒素肥料としてアンモニウム塩が用いられていますが,ここで必要になるアンモニアNH3はハーバー・ボッシュ法(窒素N2と水素H2からアンモニアNH3を合成)で製造されます。
N2 + 3H2 → 2NH3
塩化水素HCl
塩化水素HClは無色・刺激臭の気体で,水によく溶けます。塩化水素の水溶液を塩酸といいます(このとき塩化水素は溶質)。塩酸は化学工業に広く用いられているほか,便器の洗剤や胃液の成分でもあります。
工業的には塩素Cl2と水素H2を反応させることで製造しています。実験室では,塩化ナトリウムNaClに濃硫酸H2SO4を加えて熱することで発生させます。
H2 + Cl2 → 2HCl
NaCl + H2SO4 → NaHSO4 + HCl
水H2O
水H2Oは無色の液体で,海などに広く存在しています。溶媒として工業的に必要なのはもちろん,生命の維持にも欠かせない物質です。水素結合によって沸点が高い物質の代表例です。
氷は水に浮きますが,これは隙間の多い結晶構造をとっている珍しい例です。ほとんどの物質は,液体よりも固体の方が密度が大きく,その物質の液体中では固体が沈みます。
アンモニアNH3
アンモニアNH3は,無色・刺激臭の気体で,水によく溶けます。窒素肥料の原料などに用いられています。
アンモニアNH3は,ハーバー・ボッシュ法により合成されます。また,硝酸HNO3の製造(オストワルト法)の原料になります。
N2 + 3H2 → 2NH3
4NH3 + 5O2 → 4NO + 6H2O
2NO + O2 → 2NO2
3NO2 + H2O → 2HNO3 + NO
二酸化炭素CO2
二酸化炭素CO2は無色・無臭の気体で,少しだけ水に溶けます。乾燥空気中には0.037%含まれており,窒素N2,酸素O2,アルゴンArに次いで4番目に多い気体です。二酸化炭素CO2を水に溶かした水溶液は炭酸水とよばれ,炭酸飲料として親しまれています。
二酸化炭素CO2の固体はドライアイスであり,昇華性のある物質です。ドライアイスはケーキやアイスクリームなどの保冷剤として利用されています。
工業的には炭酸カルシウムCaCO3を熱分解することで得られます。エタノールC2H5OHなどの有機化合物の燃焼や,炭酸カルシウムCaCO3などの炭酸塩に塩酸HClを反応させることでも得ることができます。
CaCO3 → CaO + CO2
C2H5OH + 3O2 → 2CO2 + 3H2O
CaCO3 + 2HCl → CaCl2 + H2O + CO2
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分子からなる物質(有機化合物)
有機化合物は,炭素Cを中心に水素H,酸素Oなどの少ない種類の元素でできています。しかし,分子を構成する原子の数やつながり方の違いによって,有機化合物に分類される物質は種類がかなり多く,数千万種類もあります。
有機化合物の融点は一般に低く,燃えやすいものが多いという特徴があります。水に溶けにくいものが多く,逆にジエチルエーテルC2H5OC2H5などの有機溶媒に溶けやすい傾向があります。
メタンCH4
メタンCH4は無色・無臭の気体で,天然ガスの主成分です。都市ガスとして使用しているものは,ガス漏れ時に気付きやすいように「におい」がつけられています。他の化石燃料に比べて,燃焼時の発熱量の割に二酸化炭素CO2の生成量が少ないというメリットがあります。
エチレンC2H4
エチレンC2H4は,無色で甘いにおいのする気体です。分子内に二重結合をもっています。バナナなどの果実の成熟に関わる物質です。リンゴなどはエチレンC2H4を放出するため,バナナと一緒に保存するとバナナの成熟が早まってしまいます。逆に,ジャガイモの発芽を抑制するため,リンゴとジャガイモを一緒に保存することがあります。
エタノールC2H5OH
エタノールC2H5OHは,無色透明の液体です。アルコール飲料(お酒)の成分である他,消毒液に用いられています。また,トウモロコシなどの穀物を発酵して得られたエタノールC2H5OHを燃料とするバイオ燃料としても注目されています。
C6H12O6 → 2C2H5OH + 2CO2
酢酸CH3COOH
酢酸CH3COOHは,無色で刺激臭のある液体です。食酢の主成分で,およそ4~5%含まれています。調味料の他,医薬品や繊維の原料としても利用されています。
ベンゼンC6H6
ベンゼンC6H6は,無色で特有のにおいがある液体です。多くの化学製品の原料として利用されています。引火性が高く,また炭素の含有率が高いので不完全燃焼しやすく,多量のすす(炭素の粒)を出しながら燃えます。
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