高校化学Net参考書「化学基礎」物質の構成元素 > 熱運動と物質の三態

熱運動

 物質を構成している粒子は,常に運動しています。特に,気体での分子は1秒間に数百メートルという速さで運動しているのです。

熱運動

 例えば,右図に示すような実験で,粒子の運動を確認することができます。

 水素H2と酸素O2を別の集気びんに入れて,口を合わせてしばらく放置します。水素H2の方が酸素O2よりも軽い気体なので,そのまま混ざり合わないと予想する人が多いです。その場合は,上の集気びんに火を近づけると「ヒュー!」という高い音を出して水素H2が燃え,下の集気びんに火を近づけると激しく燃え上がるはずです。

 しかし,実際に試してみると,どちらの集気びんも火を近づけると「バン!」という爆発音を立てて激しく反応します。これは,水素H2も酸素O2も構成粒子がビュンビュンと飛び回っており,密度に関係なく混ざり合ったためです。このように,物質の構成粒子が空間全体に広がっていく現象を拡散といいます。

 実験例から分かるように,気体の構成粒子はビュンビュンと飛び回っています。また,液体でも構成粒子は流動しています。固体の構成粒子は動いていないように思われがちですが,実際には振動しています。これらの運動は熱運動とよばれ,温度が高くなるほど激しくなります。

絶対温度

絶対温度

 温度を上げると熱運動が活発になって,エネルギーの高い粒子の割合が大きくなります(粒子ごとにエネルギーは異なる)。逆に温度を下げれば熱運動が弱い粒子が多い分布になります。この時,移動できる空間の範囲は狭くなり,気体の体積は小さくなっていきます。エネルギーが空っぽになれば,全く熱運動しなくなって体積がゼロになるはずです。しかし,0℃でも気体の体積は測定できますし,氷点下になるとさらに体積は減少していきます。つまり,0℃はエネルギーが空っぽの状態ではないということになります。

 温度を下げていくと,気体は液体へと状態変化してしまいます。しかし,グラフを延長することで,理論上は-273.15℃(約-273℃)で体積がゼロになることが分かっています。この状態が絶対零度です。

 ここで,エネルギーが空っぽである-273℃を「0」とする温度の表し方をすることができます。このような温度を絶対温度といい,単位としてK(ケルビン)を用います。絶対温度はセルシウス温度と目盛の間隔が同じと定められているので,次のように変換することができます。

セルシウス温度〔℃〕-273-272-271-1027t
絶対温度〔K〕012272273300t+273

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物質の三態

 水(液体)は,0℃以下では氷(固体)になり,100℃以上では水蒸気(気体)になります。固体液体気体の状態を物質の三態といい,温度や圧力を変化させることで物理変化(状態変化)させるこができます。

 物理変化(状態変化)では,物質を表す化学式は変わりません。つまり,氷も水も水蒸気もH2Oで表されるのです。一方,化学変化(化学反応)では,「水素H2と酸素O2が水H2Oになる」のように,化学式が変わります。

 固体から液体への状態変化を,融解といいます。固体では,構成粒子どうしの引力が強く,位置を変えずに振動しています。熱を加えて一定の温度まで上がると,振動が激しくなって隙間ができて,粒子が移動することができるようになります。この温度を融点といいます。逆に,液体を冷却すると固体になります。この変化を凝固といい,凝固する温度を凝固点といいます。

 液体から気体への状態変化を,蒸発といいます。固体と同様に,液体でも構成粒子どうしの引力で1つにまとまろうとしています。熱を加えて一定の温度まで上がると,熱運動がさらに激しくなり,粒子間の引力に打ち勝って液体の内部からも飛び出します。この温度を沸点といいます。逆に,気体を冷却すると液体になります。この変化を凝縮といいます。

物質の三態

 固体から(液体にならずに)気体になる状態変化もあります。粒子どうしの引力が弱い場合に起こりやすい変化です。この状態変化を昇華といいます。昇華する物質の代表例として,二酸化炭素CO2(ドライアイス)ヨウ素I2,ナフタレンC10H8(衣類用防虫剤)などがあります。気体から固体への状態変化を凝結といいます(以前は,この変化も昇華とよんでいました)。

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