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高分子化合物

 多数の原子が共有結合でつながっている物質を高分子化合物といいます。明確な基準をつくるのは難しいのですが,あとで学習する分子量というものが10000以上のものを高分子化合物とよんでいます。

 高分子化合物のうち,動植物の生体内でつくられるものを天然高分子化合物,人工的につくられるものを合成高分子化合物,それら以外の無機高分子化合物に分類することができます。

 高分子化合物は,多数の小さい分子が結合して大きな分子になっている構造をしています。その原料となる小さい分子を単量体(モノマー)といい,生成した大きな分子を重合体(ポリマー)といいます。また,このような反応を重合といいます。

 ここでは,合成高分子化合物のうち,つくりかたの異なるポリエチレンとポリエチレンテレフタラートを紹介します。

ポリエチレン(PE)

 ポリエチレンは,レジ袋などに利用されている合成高分子化合物で,最も簡単な構造をしています。原料となる物質はエチレンC2H4です。

 エチレンC2H4には,炭素原子間の二重結合があります。二重結合は2組の共有電子対による共有結合ですが,単結合が2か所というわけではありません。1組の共有電子対は少し窮屈な状態になっており,1組の共有電子対を残して切断されやすいという性質があります。

エチレンの付加重合(電子式)

 価標を用いて表すと,次のように説明できます。

エチレンの付加重合(構造式)

 このように,二重結合(または三重結合)から不対電子を生じて単量体が次々に結合していく重合を特に付加重合といいます。

 原料から考えられる繰り返し構造を単位構造といい,その構造が何度も繰り返されています。繰り返された数を重合度といい,通常はnで表されます。

ポリエチレンの構造式

おまけ話

 高分子化合物が,小さな分子が次々と結合して1つの大きな分子になる(重合)ことがわかりました。この話をしたときに多くの生徒が「両端はどうなっているのか」という質問をしてきます。不対電子が余った状態で存在しているのでしょうか?

 実際は,全く別のものが結合しています。

 そもそも,重合が始まるときには重合開始剤と呼ばれるものが結合します。単量体に重合開始剤が反応すると不対電子が生じ,この状態のものが別の単量体と反応してそこに不対電子が生じ・・・・・・と続きます。つまり,上の図のように反応が一斉に起こるのではなく,端から順に反応が起こって長く成長していくということです。

 では,重合の終わりはどのようにして訪れるのでしょうか。これは簡単な話で,ある程度反応が進んだもの同士が,それぞれの不対電子を共有して結合します。そうすると不対電子がなくなるので,その分子は反応が終了します。よって,両方の端には反応開始剤が結合しているということになります。

 ちなみに,反応が終わるタイミングは決まっていません。長い状態になって終わる場合もあれば,短い状態で終わる場合もあります。そのため,高分子化合物の長さや分子量は一定ではなく,いろいろな長さの分子が混ざっています。

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ポリエチレンテレフタラート(PET)

 ポリエチレンテレフタラート(PET)は,飲料水の容器(ペットボトル)や衣料の繊維などに用いられている合成高分子化合物です。原料となる物質はエチレングリコールHO-CH2-CH2-OHとテレフタル酸HOOC-C6H4-COOHです。詳しくは「化学」の方で学習する内容なので原料を覚える必要はありませんが,学校によっては先を見据えて「覚えなさい」と指導する場合も考えられます。

 ポリエチレンテレフタラートは,原料となる単量体から水分子H2Oがとれて,余った価標で結合をつくる反応によってつくられます。

ポリエチレンテレフタラートの縮合重合(構造式)

 このように,単量体から原子が外れて(水分子H2Oのような別の分子がとれて)余った価標で次々に結合していく重合を特に縮合重合といいます。

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分子からなる物質ページトップ共有結合の結晶(共有結晶)