高校化学Net参考書実験指針書「化学基礎」 > 中和滴定

「中和滴定」の実験の目的

 濃度の分かっている水溶液を用いて,中和に必要な体積から,試料水溶液の濃度を求める実験です。今回は,オーソドックスに食酢中の酢酸のモル濃度を求めます。

 食酢の濃度を求める前に,水酸化ナトリウム水溶液の濃度を決定します。水酸化ナトリウムは潮解性(空気中の水蒸気を吸収する性質)があったり,二酸化炭素と反応して炭酸ナトリウムを生じたりします。そのため,正確な質量が量り取れず,もちろん正確な濃度の水溶液をつくることができません。まずは,安定な酸である「シュウ酸」の標準水溶液を用いて水酸化ナトリウム水溶液の濃度を決定します。

 器具の扱い,指示薬の選択など,多くのことを習得してもらいたい実験です。そのため,私は最低でも2時間以上は割り当てています(水酸化ナトリウム水溶液の濃度を求める時間と,食酢の濃度を求める時間)。

準備

  • 器具の準備
    • 全体
      • 電子天秤×1
      • 薬さじ×2(シュウ酸二水和物用,水酸化ナトリウム用)
      • 廃液バケツ×1
    • 班ごと
      • 薬包紙×2(シュウ酸二水和物用,水酸化ナトリウム用)
      • 50mL-ビーカー×1
      • ガラス棒×1
      • 100mL-メスフラスコ×1
      • 250mL-洗びん×1(蒸留水用)
      • 100mL-ビーカー×1
      • スタンド×1
      • アーム×2(ビュレットを上下2ヶ所で固定)
      • ビュレット×1
      • ろうと×1
      • 300mL-ビーカー(廃液用)
      • 10mL-ホールピペット×1
      • 100mL-コニカルビーカー×1
  • 試薬の準備
      • シュウ酸二水和物
      • 水酸化ナトリウム
      • 蒸留水
      • フェノールフタレイン液
      • 食酢

実験操作

  1. シュウ酸二水和物0.63gを正確に量り取る。(実際に量り取った質量で計算)
  2. 1.のシュウ酸二水和物を50 mL-ビーカーで少量の蒸留水に溶かし,これを100 mL-メスフラスコに移す。メスフラスコは蒸留水で洗っておき,濡れたまま使用してもいい。ビーカーやガラス棒に付着した溶液も蒸留水ですすいでメスフラスコに移す。
  3. 2.のメスフラスコの標線まで蒸留水を加え,よく振り混ぜて均一な水溶液にする。
    (栓をしっかりと閉めて,上下を何度か逆にすると混ざりやすい)
  4. 水酸化ナトリウム約0.4gを量り取り,100mL-ビーカーに移す。蒸留水を加えて100mLの水溶液をつくる。(ビーカーの目盛りは正確ではない。約0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液になる。)
  5. 4.の水酸化ナトリウム水溶液でビュレットを共洗いしてから,水酸化ナトリウム水溶液を満たす(ろうとを用いる)。コックより先には水溶液が入っていないので,廃液ビーカーに勢いよく流すことで先端まで溶液を満たす。
  6. 3.のシュウ酸標準溶液10mLを,ホールピペットを用いてコニカルビーカーに量り入れる。フェノールフタレイン液を1滴だけコニカルビーカーに入れる。ホールピペットはシュウ酸標準水溶液で共洗いしておく。コニカルビーカーは蒸留水で洗っておき,濡れたまま使用してもいい。
  7. ビュレットからコニカルビーカーに水酸化ナトリウム水溶液を滴下し,うすいピンク色になるまで(中和点まで)の滴下量を求める。このとき,溶液が混ざるように,コニカルビーカーを軽く揺らしながら滴下する。測定は3回以上繰り返し,平均値から水酸化ナトリウム水溶液の濃度を算出する。
  8. ホールピペットを用いて,食酢10mLをメスフラスコに量り入れる。ホールピペットは食酢で共洗いしておく。メスフラスコは蒸留水で洗っておき,濡れたまま使用してもいい。
  9. 8.のメスフラスコの標線まで蒸留水を加え,よく振り混ぜて均一な水溶液にする。
    (栓をしっかりと閉めて,上下を何度か逆にすると混ざりやすい)
  10. 9.の食酢をうすめた水溶液10mLを,ホールピペットを用いてコニカルビーカーに量り入れる。フェノールフタレイン液を1滴だけコニカルビーカーに入れる。ホールピペットはうすめた食酢で共洗いしておく。コニカルビーカーは蒸留水で洗っておき,濡れたまま使用してもいい。
  11. ビュレットからコニカルビーカーに水酸化ナトリウム水溶液を滴下し,うすいピンク色になるまで(中和点まで)の滴下量を求める。測定は3回以上繰り返し,平均値から水酸化ナトリウム水溶液の濃度を算出する。

注意点

  • 水酸化ナトリウム水溶液が目に入ると,失明の危険があります。特に,ビュレットに注ぎ入れるときは目線より高くなるので,保護めがねを着用する。
  • 水酸化ナトリウムを量り取るときに,試薬びんのフタを開けっ放しにする生徒がいます。教員が電子天秤の側にいて,声を掛けるようにしましょう。
  • ビュレットのコックにワセリンを塗りすぎると,ビュレットの先端が余分なワセリンで詰まってしまいます。詰まった塊は,有機溶媒や中性洗剤入りの湯でも全然溶けてくれません。細い針金で物理的に取り除くことになります。テフロン製のコックがあれば,ワセリンをつける必要がないので安心です。
  • ビュレットのコックが外れると,大幅に時間を失います。押しながら回すように指導しておきましょう。

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